Δx = sign{ (1-α)fx + βdx }, (1a)
Δy = sign{ (1-α)fy + βdy }, (1b)
Δz = sign{ (1-α)fz + βdz }, (1c)
ここで Δx, Δy, Δz は,それぞれ, x, y, z 方向の相対的な変位の成分を表している.sign(x) は x<0 なら sign(x) = -1, x=0 なら sign(x) = 0, x>0 なら sign(x) = +1 の値を取る関数である.fx,fy,fz は変動の力であり,αは変動のパラメータで fx の fy に対する比を表している.dx,dy,dz はドリフトを表し,βはドリフトのパラメータである.実際には,fx,fy,fz の値は,独立した乱数から得られる.dx, dy, dz は引力による補正項である.ここで,反発項は考慮しない.
基盤の上方で発生した1個の粒子は,ランダムウオークしながら基盤に近づく.その間,一定の距離内にクラスターが存在すると引力項が働きランダムウオークが制限を受けクラスターの方に力が働く.基盤の格子点にはそれぞれ異なる一定の付着確率を与えてあるが,ランダムウオークによって基盤に達した粒子がすべて基盤に固定されるわけではなく,その一部のみが固定されると考えた.
ここで固定される確率を次のように考えた.粒子が表面に衝突する場合,周囲に存在する粒子の状況により,次のような2つの状態が考えられる.図2のように拡散により表面に到達した粒子の座標を (x, y) としたとき,その周囲の8つの格子点の全てが空である場合,粒子が表面種となる確率をpとする. これに対して,隣接する (x-1, y-1) から (x+1, y+1) の8つの格子点のどれかに表面種が既に存在する場合は,確率rを加算した値を表面種として固定される確率とする.クラスターの凝集に異方性を与えるために,粒子が既に固定されている(x+1, y)のまわりの斜線部は白い部分より大きな付着確率を与えてある.つまり成長点となっている.(x, y) の位置に粒子が存在する場合は,2層目のクラスターが生成することになる.したがって,成長点は (x, y, z+1)にも存在する.こうして粒子は,固定される条件を満足しておれば粒子は固定される.表面に達した反応種が表面種とならない場合は,はじき飛ばされて消滅する.そして,新たな粒子を発生させて再度計算を繰り返す.
(p, r) および引力項の働く距離(f)などが与えられている.複数の初期設定のファイルを指定できるので,種々のパラメータを変更した計算を連続して実行することができる.
ファイル読み込みの後,乱数発生ルーチンを初期化後,粒子が1個発生し,ランダムウオークを始める.ランダムウオークの結果,z=0,つまり粒子が基板に達すると固定化の条件を調べ,満足しておれば粒子は基板に固定される.衝突した位置の周囲の状況により固定化の条件は異なっている.こうしてN個の粒子が固定されるまでこの流れ図にしたがって計算を繰り返す.固定された粒子がN個に達したとき計算は終了する.このとき,連続計算が指定されており,パラメータファイルが指定されてあれば,計算結果は自動的にグラフィックファイルとしてディスクに保存され,再度新しいパラメータを設定し計算が始まる.
N(r) ∞ r-D. (2)
実際に測定した結果を図4に対数表示した.これを見ると2つの次元に支配されているのがわかる.つまり,その微細構造はフラクタル図形であることを示している.そこで,フラクタルの支配する上限(εmax)を基盤表面上に存在する空洞の最大直径とし,粒子の
図4 Box Counting 法により測定(被覆率 10%,r/p = 40,f = 2)
直径を下限(emin)とした.このときemax と emin は次式を満足しなければならない.d ははめ込まれた空間のユークリッド次元である.
εmax/εmin ≧ d1/D. (3)
図5 粒子を固定させた基盤表面(a)および拡大表示(b),被覆率5%,r/p = 30,
引力の有効距離 f = 2.
図6 粒子を固定させた基盤表面の拡大表示,(a)被覆率10%,(b)15%,
r/p=30, 引力の有効距離 f= 2.
種々の描画結果について,クラスターサイズ,クラスターの高さを測定することにより次のことが明らかになった.まづ,図7に示すように,引力の有効距離(f)が長くなると,クラスターサイズのピークは大きくなり,引力によりクラスターが凝集しやすいことを示している.図8に示すように,r/p 比の増大にともなってクラスターサイズのピークは大きい方にずれ,クラスターは凝集する.図には示していないが,クラスターサイズが同じでも引力項 f が長いほどクラスターの形状は高くなり,針状クラスターが生成する.
図7 引力によるクラスターサイズの変化,被覆率 10%,r/p = 30,
図中の数字は引力の有効距離を示す.
図8 r/p 比によるクラスターサイズの変化,被覆率 10%,f = 2,
図中の数字は r/p 比を示す.
対して r/p の値を大きくしてもフラクタル次元の変化は微小である.r/p の値を大きくするとクラスターが凝集しやすいがフラクタル次元はそれほど変化しない.
引力の働く距離を大きくとると,クラスターは凝集しやすくなるが,フラクタル次元に変化はないことがわかる.
被覆率 | |||||
---|---|---|---|---|---|
r/p | 引力(f) | 2% | 5% | 10% | 15% |
10 | 0 | 0.6492 | 0.9758 | 0.9680 | 1.1502 |
2 | 0.6290 | 0.9365 | 0.9846 | 1.1483 | |
4 | 0.6427 | 0.9340 | 1.0456 | 1.1641 | |
20 | 0 | 0.6418 | 0.9577 | 1.1129 | 1.2748 |
2 | 0.6387 | 0.9332 | 1.1084 | 1.2629 | |
4 | 0.6805 | 0.9528 | 1.1343 | 1.2599 | |
30 | 0 | 0.6387 | 0.9492 | 1.1096 | 1.2697 |
2 | 0.6495 | 0.9374 | 1.1195 | 1.2681 | |
4 | 0.7133 | 0.9689 | 1.1532 | 1.2730 | |
40 | 0 | 0.6378 | 0.9439 | 1.1923 | 1.2671 |
2 | 0.6650 | 0.9441 | 1.1885 | 1.2752 | |
4 | 0.7428 | 0.9919 | 1.1970 | 1.2870 |