演題 量子化学における新しい可視化手法の研究
― 特に、アニメーションの活用について
発表者
(所属)
○時田澄男・大黒義裕・杉山孝雄・渡部智博(埼玉大学・工学部)
木戸冬子 (放送大学・東京第一学習センター)
連絡先 〒338 埼玉県浦和市下大久保255 埼玉大学工学部応用化学科
TEL:048-858-3516(研究室), 048-858-3511(直通) FAX:048-855-2889,
E-mail:
キーワード 混成軌道, CG, MPC level 3,アニメーション
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
混成(原子)軌道の電子状態について、混成の割合を連続的に変化させて動的に可視化した。CG (Computer Graphics)技術で等値曲面表示を可視化することにより、新しい表現の世界を切り拓くことを示した。
環境 適応機種名 Microsoft社のWindows95またはWindows NT 3.51以上が動作可能な機種
OS 名 Microsoft社のWindows95またはWindows NT 3.51以上
ソース言語 AVIファイル
周辺機器
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • ○未定
具体的方法
CD-ROMによる配布およびフロッピイディスクによる一部画像の配布を検討している。

1. 目的

化学が取扱う種々の現象は電子の働きで決まり、化合物における化学結合は電子状態で説明される。特に混成軌道は、化学結合が起こる方向での電子の存在確率が非常に大きくなり、結合の安定性や空間における方向性についての理解を深めるために重要である。本研究では、PC (Personal Computer) を使用して、動的CG技術 (Computer Graphics Animation) を利用した混成軌道の新しい可視化手法について検討した。

2. 方法および結果

(1) 水素様原子軌道を使って表現される炭素原子(核荷電=3.25)の2s原子軌道(χ2s)、2p原子軌道(χ2px ,χ2py ,χ2pz )と、これらを混ぜ合わせたsp混成軌道、sp2混成軌道、sp3混成軌道を題材とした。
(2) PCは、世界的な普及率を考慮してDOS/V 機とし、マルチメディア対応としていわゆるMPC (Multimedia Personal Computer) level 3を満たすものを採用した。
(3) CGの素材となる原子軌道や混成軌道の3次元格子点におけるデータの作成には、C言語の自作のソフトウェアを使用した。[1, 2]
(4) 3次元CGである等値曲面表示には、AVS社の可視化ソフトウェアAVS (Application Visualization System) を使用した。[3]
(5) CGアニメーションの作成には、Adobe 社のPremiereを用いた。
(6) CGアニメーションの再生には、Microsoft 社のWindows95またはWindows NT 3.51以上のメディアプレーヤーを用いた。
(7) CGアニメーション(デジタル動画データ)のファイル形式は、Microsoft 社の規格であるAVI (Audio Video Interleave) とした。
(8) 図1に、2p原子軌道、sp3混成軌道、sp2混成軌道、sp混成軌道、2s原子軌道の等値曲面(0.03 [au-3/2], 0.00 [au-3/2], -0.03 [au-3/2])を示す。このうち、関数値-0.03 [au-3/2] の等値曲面は半透明表示として、他の等値曲面が隠されることを防いだ。図1に示す以外の中間の混成もアニメーションで連続表示すると、s性の増大により平面状の節面が球形の節面に変化する様子が表現できた。


図1.アニメーションのスナップショット

(9) 図1の様に、関連するCGを並べて比較することにより、個々のCGのみからは得られない重要な情報を得ることが出来る。また、これらの画像の間の情報を含めて連続表示させるアニメーションを用いると、混成により軌道胞 (lobe)が一方の側に片寄り、化学結合を形成する際に軌道の重なりが大きくなることが、表現出来た。

3.参考文献

[1] 時田澄男,「目で見る量子化学」,講談社,1987.
[2] 時田澄男,渡部智博,木戸冬子,前川仁,下沢隆,「水素原子の原子軌道の可視化」, J. Chem. Software, 3, 35 (1996). このJournalの内容は,WWWの化学ソフトウェア学会のホームページ http://www.sccj.net/CSSJ/から見ることができる.
[3] AVS USER'S GUIDE:AVS MODULE REFERENCE , クボタコンピュータ, 1991.