Asia Hub for e-Drug Discovery
徳島大学 中馬 寛
(2005年9月15日 会告Vol.4, No.3)
先日,ソウルで開かれたアジア国際化学会議 (11th Asian Chemical Congress) に出席後,そのChemoinformaticsのセッションに参加した大半の参加者とともに風光明媚な済州島に移動し,小生は日本からのadvisory committee memberとして "Asia Hub for e-Drug Discovery Workshop" に参加した。2年前に韓国のBMDRC (Bioinformatics & Molecular Design Research Center) のProf. No が主に韓・日の参加者による e-Drug Discovery Workshopをソウルにて主催したが,今回はその第2回目にあたる。今回は中国からの参加者やProf. Gesteigerら欧米からの招待講演者を交え,活発な講演と討議がなされた。講演内容はGrid,Computational Chemistry,統合データベース,HTS & Combinatorial Chemistry, SAR,Support Vector Machineなどを用いたChemoinformatics,タンパク質の立体構造予測などに加えて,BMDRCのProf. No,日本の生命情報科学センター(CBRC)の秋山泰氏,中国科学院・上海薬学研究所・Drug Discovery & Design CenterのProf. Jiang がこの分野におけるそれぞれの研究グループの活動紹介を行った。これらの講演とは別に韓国のScience and Technology Policy Institute (STEPI) のDr. Chungからの "Regional Science and Technology Cooperation in East Asia" というタイトルで行われた講演を大変興味深く聴くことができた。Dr. Chungは欧米との比較から韓・日・中におけるR & D分野におけるそれぞれの国の投資額,特許・論文数などの分野別構成比を基に3国の科学技術と経済に関する数々の興味ある特質を導き出している。とりわけ韓国と日本では,投資額や特許等の分野別構成比が極めて似ていること,3国合計の総生産がEUに迫りつつあることなどである。韓・日の科学技術基本政策に多少の差こそあれ,国民性や社会基盤における類似点から両国共同の基礎研究開発プロジェクトの可能性が現実以上にはるかに大きいことを思い知った。また,今回のワークショップが個人同士の偶然の出会いから始まったことには興味深い思いがある。Noさんと秋山さんはある学会の座長を務めたとき以来お互いに親密となっていたが,小生はNoさんにe-Drug Discoveryの第1回目のワークショップに招かれて以来いろいろな国際学会で彼と会う機会があった。2年前に京都で開かれた薬学国際会議 (AIMECS2003) で旧知のJiangさんをNoさんに紹介したのことが発端になり,今回の3国主催のワークショップ開催に発展したようである。今回のワークショップはより本格的なAsia Hub for e-Drug Discovery Workshop開催の準備のためであり,小生も含めた戦争を知らない世代の文字通りの "Asia Hub" となることを心より願っている。