巻頭言
日本コンピュータ化学会会長 細矢 治夫
(2002年3月15日 会告Vol.1, No.1)
本年元旦に、日本化学プログラム交換機構 (JCPE) と化学ソフトウエア学会 (CSSJ) とが合併して、日本コンピュータ化学会 (SCCJ) が発足いたしました。CSSJの会長だった私が、新学会の会長を務め、JCPEの代表だった平野恒夫氏が名誉会長となり、2人3脚のかたちで新学会の立ち上げを行うことになりました。両団体の強力なエンジン役だった、田辺和俊、吉村忠与志両氏を始め、新事務局長の長嶋雲兵氏等の多くの推進役の方達と新しい若い血を加えた役員会で諸事分担し、トロイカ方式で学会立ち上げ最初のバリヤを乗り切ることができ、この会誌第1号を皆様にお届けすることができた次第であります。
この新学会の発足に当たり、六百名近い個人や多くの企業が会員として参加して下さいました。役員一同を代表して心から御礼申し上げます。私どもも頑張りますが、会員の皆様も更に会員増強のキャンペーンにお力添えをお願い致します。
JCPEが行ってきた業務の中で、当初は化学関係のプログラム交換が主要なものでありましたが、その需要も最近は大分減って来たので、新学会の活動の主な柱としては、論文誌Journal of Computer Chemistry, Japan (JCCJ) の発行、討論会、セミナー、講習会の開催、その他会員間の情報交換等があります。
特に、従来のJCPEが開催していた初夏の計算化学シンポジウムとCSSJが行っていたソフトウエアのデモを中心とする秋の発表会は、何れも従来の路線を踏襲して続ける計画です。しかし、両団体のもっていたそれぞれの性格や人脈等を融合して、新しいアイデアや構想でコンピュータケミストリーの特色ある行事になるように改善して行きたいと思っております。ここでも、会員の皆様のご理解とご協力を賜りたく存じます。
論文誌も、JCPEの会誌とCSSJのJournal of Chemical Software (JCS) を合体させたような性格のものに発展させて行きたいと、雑誌担当の役員達が張り切っております。もちろん、それには電子媒体の有効な利活用が前提であります。
このように、新学会の会員諸氏は、それぞれ特徴のあった二つの会のアクティビティに優先的に参加しながら、新たな発展に御協力戴きたいと思います。
問題は新学会の財政基盤であります。これまで、両団体のマネージメントや雑誌の発行は、田辺和俊氏と吉村忠与志氏の献身的な御努力で続けられてきたのですが、新学会の21世紀の発展のためには、個人のボランタリー的な奉仕に甘えず、財政的にも人的にもきちんと裏打ちされた組織で学会の事務局を運営して行くべきであります。新学会の年会費5千円の額も、発起人会で十分議論した結果決まったものです。この点を何とぞ御理解の上で、新学会を支えて戴きたくお願い申し上げます。私を始め、役員一同も、肝に命じて会費に見合うサービスを会員諸氏にお届けする所存であります。よろしく、お願い申し上げます。
最後に、関係諸団体、諸学会の関係者にお願いがあります。私どもが統合合体した時点でも、未だいくつもの関連学会や団体が数多く活動しております。我が国のコンピュータ化学、理論化学、情報科学の層の厚さと幅の広さを如実に表した現象とも言えます。しかしこの問題は、個人の研究活動の効率や、我が国全体のこの分野の発展のためにも、関係者があらためて真剣に討議し改善すべき緊急のターゲットであります。日本コンピュータ化学会も、既存の関連諸団体と学会と連絡を密にして学会活動を続けて行く所存なので、いろいろなお力添えを戴きたく思いますが、同時に上記の問題をあらためて提起し、この新学会の巻頭言をオープンエンドで終えたいと思います。