2007年度表彰
2008年05月22日 表彰
2007年度
日本コンピュータ化学会 表 彰
SCCJ Award of the Year 2007
前年度の表彰を行うことに変更された.
日本コンピュータ化学会 2007年度 学会賞
【受賞者】
本間 善夫 氏 新潟県立 新潟女子短期大学 准教授
【受賞理由】
本間善夫氏は,1977 年に山形大学大学院工学研究科高分子化学専攻修士課程を修了し,東北女子大学家政学部に助手として着任し,1980 年に同講師,1983 年に同助教授,1985 年には同学部専攻科の兼担となり,生活の化学という視点で教育・研究にあたってきた.1986 年4 月に県立 新潟女子短期大学の助教授(2007 年より准教授)として着任し,現在に至っている.
山形大学では高分子基質中の低分子の拡散速度の研究を行い,卒業後は主に高分子中の色素の光退色速度の研究に携わった後,学生の教育の中で分子模型を利用する実践の延長としてコンピュータを利用して立体的な分子モデルを表示する仕事に関わるようになった.
「日本コンピュータ化学会」の前々身の一つに当たる「化学PC 研究会」に早くから所属し,1992 年に矢野米雄による「分子の組み立てプログラムCAMD-I」を改良した「CAMD-I plus」を化学ソフトウェア学会無償利用ソフトウェアとして登録したのを皮切りに,「CAI 作成BASIC サブルーチンプログラム集」,「実験データ処理パック」,「表計算データCAI 教材化プログラム SSCAI」を開発して登録した.1997年にはSSCAI 開発の研究で化学ソフトウェア学会技術賞を受賞している.また,年会における発表は1993年以降,毎年行ってきており,その一部は論文として発表されている.1998年には化学ソフトウェア学会年会1998 研究討論会の実行委員を務め,要旨集とWeb ページの編集を担当した.
その後,コンピュータのOS の変化やインターネットの登場を受け,Web ブラウザを利用して分子モデルをインタラクティブに動かせるフリーツールを利用して多数の分子を参照できるようにする研究に従事するようになった.1996 年にWeb サイト「生活環境化学の部屋」(現URL:http://www.ecosci.jp/)を開設し,MDL MOL 社の分子表示ツールChime を利用して,農薬,香り分子,薬物など,化学教育や環境教育に利用できるコンテンツを公開したのを出発点に,多様なコンテンツを提供し続けている.ADSL や光回線の登場によるネット高速化後は,PDB に登録されている生体高分子のデータを活用したコンテンツ群を順次公開し,その経緯は本学会等で報告している.
その後Chime を利用できる環境が少なくなってきたのを機に,Java ベースで動作するオープンソースJmol の利用に取り組み,その多彩な表示機能を活用して初学者にも生命科学を学びやすくするコンテンツ等を送り出してきている.
その間,1999 年にはChime を利用した「パソコンで見る 動く分子事典 CD-ROM 付」(共著),2007 年にはJmol を利用した「DVD-ROM 付 パソコンで見る動く分子事典 Windows Vista対応版」(同)を講談社より上梓し,オフラインで多数の分子を閲覧できるようにするなど,一貫して分子をわかりやすく楽しく学べる活動を継続している.
「日本コンピュータ化学会」は,このような,コンピュータとインターネットを利用した化学教育と一般への啓発活動の寄与に対して,本間善夫氏を本会の学会賞の受賞者とすることに決定致しました.
(文責:会長 細矢治夫)
日本コンピュータ化学会 2007年度 吉田賞(論文賞)
【受賞論文】
不規則性多孔体微細構造最適化のための三次元多孔質シミュレータPOCO2の開発と応用
古山 通久1, 扇谷 恵1, 服部 達哉1, 福長 博2, 鈴木 愛3, SAHNOUN Riadh1, 坪井 秀行1, 畠山 望1, 遠藤 明1, 高羽 洋充1, 久保 百司1, A. DEL CARPIO Carlos1, 宮本 明1,3
1) 東北大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 2) 信州大学 繊維学部 精密素材工学科 3) 東北大学 未来科学技術共同研究センター
J. Comput. Chem. Jpn., Vol. 7, No. 2, 55-62 (2008).
【受賞理由】
著者が開発を進めてきたプログラム三次元多孔質シミュレータPOCO2 は,数十nmから数μm の広範なサイズの不規則構造を有する多孔性材料の微細構造最適化のための新規基盤技術である.POCO2 は,独自の重複許容粒子パッキング法の導入により従来極めて困難であった不規則性多孔質構造の計算機上での取り扱いを実現した手法であり,計算機化学の新しい方向性を指向した革新的な手法である.本論文では,POCO2 に実装されている機能のうち,重複許容粒子パッキング法,様々な微細構造の定量評価法について説明し,これらの機能を活用して固体酸化物燃料電池燃料極への応用を行った結果を示している.
このような不規則性多孔体微細構造最適化のための基盤システムは,計算機化学の発展に欠かすことのできないシステムであり,本プログラムの開発は質の高い内容を持つばかりではなく,計算機化学の発展に大きな希望を持たれていた故吉田 弘先生のご意志に添うものであるので,ここに一層の発展を期してこれを吉田賞論文として表彰する.
(文責:会長 細矢治夫)
日本コンピュータ化学会 2007年度 特別功労賞
【受賞者】
曽々木 志穂 氏 日本コンピュータ化学会 事務局 秘書
【受賞理由】
曽々木志穂氏は,1997 年千葉大学法経学部経済学科を卒業後,金融関係・不動産関係の会社で営業職,営業事務,管理事務などを経験,カナダに語学留学後の2002 年に株式会社ベストシステムズに就職し,そこで日本コンピュータ化学会の事務局の業務を兼任されました.
本特別功労賞は,曽々木志穂氏が本学会の立ち上げ時に果たされた多大な功績に対するものであります.
曽々木志穂氏の本学会への貢献として特筆すべきは,2002 年1月1日より日本化学プログラム交換機構(JCPE)と化学ソフトウエア学会(CSSJ)が合併して,新たに日本コンピュ-タ化学会(SCCJ)として発足した本学会の立ち上げ時から2006 年までの5年間にわたり,本学会の様々な事務処理に関する礎を構築し,本学会が新しい歩みをスムースに始められるように御尽力なさってくださったことです.これにより日本コンピュータ化学会は,効率の良い運営のもと,世界に広く開かれた学会として高く評価され,日本のコンピュータ化学の地位向上に大きな貢献をしています.
日本コンピュータ化学会は,ここに曽々木志穂氏を本会の特別功労賞の受賞者とすることに決定致しました.
(文責:会長 細矢治夫)