2021年度表彰
日本コンピュータ化学会 2021年度 吉田賞(論文賞)
【受賞論文】
熱硬化性樹脂コンポジットにおける物性予測に向けた機械学習モデル構築
高原 渉, 小林 優希, 森田 将司, 奥山 浩二郎, 川村 信行
パナソニック株式会社 インダストリアルソリューションズ社 電子材料事業部 技術開発センター
Journal of Computer Chemistry, Japan, Vol. 20(2021), No. 1, pp.14-21
【受賞理由】
本論文では、自社の実験データを用いて,熱硬化性樹脂コンポジットを工業的に応用する際に重要となる比誘電率(ε),誘電正接(tanδ)予測に向けた機械学習モデルを構築し、Training data setにおける交差検証(Cross-validation)時の決定係数R2CV > 0.8を満たすモデルを抽出した.更にTraining data set においてRMSE (Root Mean Square Error)及びMAE (Mean Absolute Error)の値が小さく,より定量的な物性予測が可能と考えられるモデルを選択し,Test data setにおける評価を行った結果,最終的にRMSEやMAEがε及びtanδそれぞれの平均値に対して10−1∼10−2オーダーで物性予測可能な機械学習モデルが得られた.本結果より,熱硬化性樹脂コンポジットにおいてもMI (Materials Informatics)によるアプローチが有効であり,定量的な特性予測が可能であることを初めて実証した.
本論文はコンピュータ化学分野の広範囲な分野において質の高いパラメータ生成の可能性を持つことが期待される.
コンピュータ化学の発展に大きな希望を持たれていた故吉田 弘先生のご意志に添うものであるので、さらに一層の発展を期してこれを吉田賞論文として表彰する。
(文責:会長 細矢治夫)
日本コンピュータ化学会 2021年度 吉田賞(論文賞)
【受賞論文】
化合物のAmes予測におけるGraph Convolutional Networkの特徴評価
半田 千彰1), 小沢 知永1), 福澤 薫2), 米持 悦生2)
1) キッセイ薬品工業株式会社 基盤技術研究所
2) 星薬科大学 薬品物理化学研究室
Journal of Computer Chemistry, Japan, Vol. 20(2021), No. 1, pp.1-9
【受賞理由】
本論文では、医薬品候補物質の潜在的な発がん性早期警戒システムであるAmes試験のin silico予測は,創薬研究において重要な予測項目の一つである.in silico予測の一手法である機械学習による予測では,Applicability Domain (AD)という機械学習モデルが本来の性能を発揮できるデータ領域を定義する研究がある.創薬研究においては,学習データと構造類似性が低い医薬品候補化合物の予測を行う場合があり,そのような化合物はAD領域外になる可能性が高く予測精度が低下する傾向がある.本研究では,Ames試験の機械予測モデルを作成し,テストデータとしてAD領域内/外となる確率が高い化合物群をそれぞれ用意して, Graph Convolutional Network (GCN)と既存の機械学習手法の予測性能を比較した結果,AD領域外となる可能性が高い化合物群の予測性能において,GCNは既存手法より優れていた.
本論文はコンピュータ化学分野の広範囲な分野において質の高いパラメータ生成の可能性を持つことが期待される.
コンピュータ化学の発展に大きな希望を持たれていた故吉田 弘先生のご意志に添うものであるので、さらに一層の発展を期してこれを吉田賞論文として表彰する。
(文責:会長 細矢治夫)