演 題 | 反応または薬物速度論の流体力学モデル ー そのコンピューターシミュレーション | |
発表者 (所属) |
菅 田 節 朗 ( 共 立 薬 大 ) | |
連絡先 |
〒105-8512 東京都港区芝公園 1-5-30 共立薬科大学 Tel: 03-5400-2657 E-mail: Fax: 03-5400-1378 |
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キーワード | 反応速度論 薬物速度論 流体力学 モデル シミュレーション | |
開発意図 適用分野 期待効果 特徴など |
流体力学モデルはもともと反応速度論または薬物速度論の理解に有用である。これをパソコン上でリアルに自在に再現した。さらにパソコンでは経時変化のグラフ等を同時に描けるのでよりよい教育効果が期待できる。 | |
環 境 | 適応機種名 | NEC PC-9801シリーズ |
O S 名 | ||
ソース言語 | N88BASIC(86) | |
周辺機器 | プリンター、ディスプレイ | |
流通形態 (右のいずれ かに○をつけ てください) |
・化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする ・独自に配布する ・ソフトハウス、出版社等から市販 ・ソフトの頒布は行わない ・その他 ○未定 |
1.はじめに
反応速度論または薬物速度論のパソコンによるシミュレーションは数多く発表されているが、そのほとんどは薬物の濃度または量の経時変化をグラフにプロットしてゆくものである。それらのグラフは量的変化を正確に把握するのに適し、この分野の学習の基本データでもある。一方、流体力学モデルによるシミュレーションは別の意味でこの分野の学習に有効である。このモデルでは容器(線形速度論では、容器は円筒)内の水の量が薬物の濃度または量を意味し、水位差が反応または薬物動態の駆動力になっていること、毛細管でつながった2容器間の水位が等しいことは平衡を意味しているということが容易に体験できる。
実際の流体力学モデルのシミュレーションそのものはそう難しいわけではないが、速度は容器の断面積、毛細管の内径及び長さ、水温等に影響されるので、思い通りの速度定数でシミュレーションするのは難しい。そこで、線形の反応または薬物速度論の流体力学モデル6例をパソコンで再現することにし、あわせて経時変化のグラフ等を同時に描かせた。
2.基になる理論と計算
円筒容器の底に近い側面に長めの毛細管をつないだとき、その毛細管を流れる水は層流をなしその流速は水位(厳密には、毛細管の入り口と出口における圧力差)に比例し毛細管の長さに反比例する(ポアズイユの式、毛細管の内径および水温は一定とみなす)。速度定数kの大きさは毛細管の長さLで表した(Lはkに反比例)。流速は水のとぶ距離で表した(可逆過程では、矢印の長さで表した)。基本計算は6例とも厳密解によった。
3.プログラムの概要
プログラミングしたモデルは (1) A→B(急速静注)、(2) C←A→B(急速静注で2つの消失過程を有する場合)、(3) A→B→C(経口投与)、(4) A−>B→C(点滴静注)、 (5) A<===>B(2−コンパートメント閉鎖型モデル)、(6) C←A<===>B(2−コンパートメント開放型モデル)の6例である。ただし、→ と ← は1次、<===> は1次の可逆、−> は0次の速度過程を示し、かっこ内は対応する薬物速度論でのモデルをさす。初期画面で任意のモデルを選択。個々のモデルでは速度定数等若干の説明、流体力学モデル、経時変化(必用なら対数プロットも)のグラフを表示した。理解を深めるため、任意の時間毎にシミュレーションを停止できるようにした。
4.結果と考察
図1に実行例を示す。A、B、C の円筒はそれぞれ血漿、組織、体外コンパートメントを示す。α−相(分布相)を過ぎβ−相(消失相)に入ってしばらく経過した場面であり、AB間の水位に若干のずれが見られる(Aの対数プロットは時間と共に直線に近づく)。k1、k2の値を大きくするほどα−相が短くなり、AB間の水位のずれは小さくなり(AB間で速やかな平衡が達成される)、1−コンパートメントモデルとして扱えるようになることがわかる。
いずれの例でも流体力学モデルがリアルに自在に再現できた。流体力学モデルの特長、つまり水位差が反応または薬物動態の駆動力になっていること(および水位差と速度は比例関係にあること)、可逆過程で2容器間の水位が等しいことは平衡を意味しているということが容易に疑似体験できた。また、流体力学モデルを経時変化のグラフと対比できるのは便利である。
図1.流体力学モデルのコンピューターシミュレーションの一場面(C←A<===>B、つまり 2−コンパートメント開放型モデルの例) 円筒の断面積の比はA:B:C=1:0.5:1 であり、この場面での水(つまり薬物)量の大小は C>A>Bである。