演題 糖・脂質モデリングシステムの開発(3)
発表者
(所属)
  中田 吉郎、 滝沢 俊治
   (群馬大学工学部)
連絡先 〒371 前橋市荒牧町4ー2
     群馬大学工学部(荒牧)生物物理学教室
キーワード 生体膜、 糖鎖、 脂質、 分子モデリング、 分子力学法
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
生体膜のモデル構造を作成するプログラムである。 生体膜を構成する脂質分子の構造をライブラリーから選択し、セルの の大きさ、分子の向きなどを決めて膜構造を作る。
環境 適応機種名 PC9801シリーズ
OS 名 MS−DOS
ソース言語 MS−Fortran, MS−C
周辺機器
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • ○未定
具体的方法

1. はじめに

 生体膜はすべての細胞の構造と機能において重要な役割を担っている。生体膜はグリセ ロリン脂質と膜タンパク質を主要な構成物質として構築されているが、形態的には脂質分 子が二重分子層として作っている膜構造が基本であることがわかっている。そこで生体膜 の構造を理解するためには、その構成要素である脂質分子の集合体がどのような構 造を取るかを、脂質分子の種類、立体構造などと結び付けて検討する必要がある。
 すでに脂質分子の立体構造についてはその作成プログラム1)を、さらに2種類の 脂質分子を平面状に規則的に配列させた時に、どのような安定な配置が可能である かを探索するプログラム2)を、本学会において発表した。そこで今回は、2種類の 脂質分子が平面状に配列したときにどのような配置が安定であるかを検討するプロ グラムを開発することを目的とした。
 なお本プログラムは、以前に本学会で発表した分子設計支援システムMMHS3) のオプションプログラムとして開発したので、操作法とかファイル形式はそれと同 じである。

2. プログラムの特徴

 図1に示すように、平面上にAとBの脂質分子を並べて単分子膜モデルを作る。脂質 分子はユニットセルの頂点と中心に配置する。そしてセルの大きさ(a,b)やA分子と B分子の向き(図2)などを変数としてこの系の配置エネルギーを求める。系の配置エネ ルギーは分子間相互作用エネルギーの和として求める。

 図1 生体膜モデル構造図


 図2 脂質分子の向きと変数

3. 実行結果

 ホスファチジルコリン(1S-2A-PC)とホスファチジルイノシトール(PIP2)の混合系 について計算を行なった。両分子が等量の場合、分子の向きがφ=25°、ψ=160°、 χ=0°でセルの大きさがa=11.6Å、b=11.6Åの所がエネルギーの極小点となっ た。この値は脂質結晶系のセルの大きさ(7〜10Å)に比べて少し大きいが、この計算 に用いたモデル分子の炭化水素鎖が不飽和鎖であるので大きくなったと思われる。

4. 参考文献

1)中田吉郎他、糖・脂質モデリングシステムの開発、化学ソフトウエア学会年会
  ’94研究討論会、苫小牧、1994年8月。
2)中田吉郎他、糖・脂質モデリングシステムの開発、化学ソフトウエア学会年会
  ’95研究討論会、鯖江、1995年10月。
3)中田吉郎、藤沼一信、分子設計支援システムMMHSVer3.1、第4回化学PC
  ソフトウエア研究討論会、鯖江、1989年11月。