演題 リレーショナル・データベースソフトを利用する多機能講義ノートの作成
発表者
(所属)
吉野 輝雄 
(国際基督教大学・理)
連絡先 〒181 三鷹市大沢 3−10−2 国際基督教大学教養学部
     理学科化学教室   0422-33-3281 e-mail:
キーワード 講義ノート, FileMaker pro,統合環境,リレーショナル・データベース
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
リレーショナル機能をもったファイルメーカーpro Ver. 3(クラリス社) を用いて多機能電子講義ノートを作成した。各種の講義資料や文献を統合的に 管理し,実際の講義の中では,写真や図表リストを選択することによってパソ コンと連結した液晶プロジェクターで見せることができる。
環境 適応機種名 Macintoshコンピュータ(CPU86020以降の上位機種)
OS 名 Kanji Talk 7.1
ソース言語 FileMaker proの定義コマンド,スクリプトを利用
周辺機器
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • ◎その他
  • 未定
具体的方法

1. はじめに

 大学での講義は講義ノートづくりから始まる。講義の目的,シラバス,内容,課題,アイデアなど講義をする者の考えを講義ノートにまとめて講義に臨む。初めての講義がたいへんだと言われるのは,そのような自分の講義ノートづくりのたいへんさにあると言えよう。さらに同じ科目を毎年講義する場合には,内容を改善し,資料を追加し,講義法を工夫するはずである。毎年同じノートを広げて同じことを講義することは,日進月歩の速い理系では許されないであろう。このような状況の中で,私は講義ノートをペンで書くことの限界にぶつかった。そこで,ワープロを使い,パソコンからプリントして配布資料にしたり,図表をOHPで写しながら講義をするようになって来たが,今度はパソコンに保存した多量の講義資料の管理と利用に問題を感ずるようになった。この問題解決のために試作したのが,今回発表する「多機能講義ノート」である。

2. 「多機能講義ノート」とは?

 ファイルメーカー(FM) pro Ver. 3(クラリス社)というリレーショナル機能をもったデータベースを利用することによって,講義に用いるあらゆる資料を統合環境の中で利用できるようにした。すなわち,主ファイル/ジョブ選択画面(Master)の下に「講義のための基礎資料(Source)」,「講義用資料(Class)」,「発表資料(Publish)」,「公開授業(Communication)」の4つの部屋をつくり,相互に自由に移動でき,その中の資料を効率的に利用できるような環境を構築した(図1)。ここで示したものは,私が過去10年間以上,本務校において一般教育科目「自然科学 III」(タイトル・「水と人間」)[1, 2]で用いてきた資料を4つの部屋に振り分けたものである。

図1 多機能講義ノート(Dynamic lecture notebook)

 これらの機能は,FMのリレーショナル機能により実現したもので,多くのファイルにデータを分割保存しておき,主ファイルから必要に応じて呼び出して使用できるところに特徴がある。一つのファイルに他種類のデータを無理矢理まとめることも可能であるが,メモリーサイズが大きくなって処理速度が低下するという問題が生じる。当面必要としないデータまで一つのファイルにかかえることの非効率性をリレーショナル機能が解消してくれたのである。
 講義の中では,パソコン内に保存してある図表を液晶プロジェクターに連結して直接大型スクリーンに写しているが,それらの管理を当「講義ノート」にさせている。この際,FMのApple Eventを利用すればグラフィックソフトとリンクさせて表示することができる。

3. さいごに(課題)

 今は,FMに備わった機能を活用して自分の講義に必要な資料を統合管理する枠組みをつくった段階で,まだ全ての資料の統合が完了しているわけではない。Apple Eventを用いたアプリケーションソフトとのリンクには動作不安定という問題がある。また,Communicationの部分は全く手をつけていない。実用的で応用性のある「講義ノート」の完成を目指して改良を重ねているところである。

参考文献

1. 吉野輝雄, 「水を通して人間を考える一般教育」, 一般教育学会誌, 10, 71-74(1988).
2. 吉野輝雄, 「一般教育(化学)科目への『仮説実験授業』方式の導入」, 一般教育学会誌, 13, 94-102(1991).