演題 |
還元糖の滴定支援プログラム |
||
発表者 (所属) |
石橋 浩 (門司税関) |
||
連絡先 |
〒801 北九州市門司区西海岸1−3−10 門司税関 |
||
キーワード |
Java、Active X、Excel、還元糖の滴定 |
||
開発意図 適用分野 期待効果 特徴など |
還元糖の滴定法のうち、糖量の算出が複雑なものについて、配列変数及びユーザー定義関数を用いることにより容易に算出可能とした。滴定条件の最適化ばかりでなく、実験内容のシミュレーションもコンピュータで行えるようにした。 |
||
環境 |
適応機種名 |
Javaアプレットの動作するPC98及びIBM機 |
|
OS名 |
Windows 95 |
||
ソース言語 |
Visual J++、Delphi 3.0、Visual Basic 5.0 |
||
周辺言語 |
MS Excel |
||
流通形態 (右のいずれかに○印をつけて下さい) |
・化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする ・独自に頒布する ・ソフトハウス、出版社等から市販 ・ソフトの頒布は行わない ・その他 ○未定 |
具体的方法 |
|
ぶどう糖や乳糖などの還元糖を定量する方法は、主に(1)機器によるもの、(2)比色法によるもの及び(3)滴定によるものがあげられる。(3)には(a)還元反応に鉄試薬を用いるもの、(b)銅試薬を用いるものがある。(1)$(2)及び(3)の(a)では、多くのものについて測定値等と糖量との間に直線関係があることがあらかじめ知られており、単純な線形関数によって糖量を算出することができる。一方、(3)の(b)では、糖定量表のデータ群をもとにして、滴定値を糖量に変換する必要がある。それらのデータ群は単純な線形関数では表現できないため、コンピュータによる演算には何らかの工夫が必要である。今回、著者は国際砂糖分析統一委員会(ICUMSA)のデータ群及び算出法を参考にし、コンピュータによる演算法について考案した。
滴定値から糖量を算出するばかりでなく、糖量から滴定値を推定することも行えるようにしたことで、滴定条件の最適化が容易となった。さらに、従来困難とされてきた混合糖系のシミュレーションもコンピュータ上で行えるようにした。
データ群は滴定値mlごと(範囲は15ml以上50ml未満)の糖量(mg/糖液100ml)で表現されている。一定量の銅試薬を糖液により滴定する場合、反応が化学量論的に進行するのであれば、還元反応に必要な糖液量と糖液100ml中の糖量との間には反比例の関係が成り立つが、実際には、化学量論的とはならないので、次式、
糖液100ml中の糖= Factor(滴定値) × 100 / 滴定値
のFactor(滴定値)は滴定値により変動する。そこで、本プログラムでは得られた滴定値がデータ群のどの範囲にあるかを判定し、それが15ml以上50ml未満であればその範囲を直線補間して、次式、
糖液100ml中の糖量 = (R(i + 1) −R(i)) × (滴定値 − i ) + R(i)
により算出する。ここでiは正の整数であり、R(i)とは糖定量表中の滴定値i mlにおける糖量である。さらに、滴定値が15ml未満の場合には、
糖液100ml中の糖量 = R(15) × 15 / 滴定値
また、滴定値が50mlを超える場合には
糖液100ml中の糖量 = R(50) × 50 / 滴定値
を用いる。これらをユーザー定義関数等に定義することにより、滴定値から糖量を算出することが容易となる。
加えて、これらの式をもとに糖量から滴定値を算出する、いわゆる逆関数も定義した。これにより、実験条件の最適化等のシミュレーションが簡素化される。
主な操作はインターネットエクスプローラ上で行うようにし、入力個所・ボタン数を極力少なくすることで、習熟が容易となるようにした。
図 動作例(1)(左図)及び動作例(2)(右図)
また、グラフ表示を多用する等、視覚的な理解を助ける工夫に努めた。プログラム群は大別すると以下のとおりとなる。
糖の種類、試料重量、希釈倍数、滴定値等を入力すると、糖量及び糖含有量を算出する。
滴定実験を行うにあたり、試料採取量及び希釈倍数をあらかじめ算出することができ、実験の最適化に貢献する。
銅法は複数還元糖の分別定量には向いておらず、還元性を示さない糖(しょ糖など)と一種類の還元糖との混合試料に関して行うのが普通とされる。ここでは仮想実験として、二種類の還元糖の混合試料が持つ直接還元力を推定する。試料中に混在する還元糖の種類及びその量を推測するのに用いる。
(なお、文中意見にわたる部分は著者個人のものであり、税関の公式見解を示すものではないことをお断りします。)