演題 |
拡張DLAモデルによる薄膜生成過程のシミュレーション−
引力項の検討とフラクタル次元による波形解析
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発表者 (所属) |
○宮田 壽, 戸田与志雄, 大野 隆
(広島県立大,大阪府立高専,神戸大)
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連絡先 |
〒727 広島県庄原市七塚町727 TEL 08247-4-1000
広島県立大学 経営情報学科 FAX 08247-4-0191
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キーワード |
拡張DLAモデル,薄膜生成,シミュレーション,フラクタル次元
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開発意図 適用分野 期待効果 特徴など |
プロテクトメモリ利用による32ビットコンピュータの有効利用,3次元クラスターのフラクタル次元の検討
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環境 |
適応機種名 |
i386 以上のCPUを搭載したPC98シリーズ
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OS 名 |
MSDOSVer3.3以上とDOSエクステンダー
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ソース言語 |
C言語(High C 386)およびマシン語
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周辺機器 |
プロテクトメモリ10M以上必要
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流通形態 右のいずれ かに○をつけ てください) |
- 化学ソフトウェア学会の
無償利用ソフトとする
- 独自に配布する
- ソフトハウス、出版社等から市販
- ソフトの頒布は行わない
- その他
- ○未定
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具体的方法
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1. はじめに
固体上への粒子の付着と成長,あるいは種々の高分子化合物の凝集過程,結晶成長,ある種の無機化合物の凝集などがフラクタルの概念で整理されることがよく知られているが,1個の粒子(クラスター)の成長あるいは凝集について議論されることが多く,クラスターを構成する粒子の数,それらの分布などについての検討は少ない.既に我々は,固体の基盤上に小さなクラスターが生成しやすいことを吸着現象のスペクトルの解析および簡単なDLAモデルによるシミュレーションから明らかにした[1,2].さらに,最近,3次元クラスター凝集の新しいモデルについて提案した[3].本研究では,固体の基板上に反応性の高い粒子がどのように固定され,クラスターとして成長していくか,その形状,フラクタル次元などを検討した.
2. グラフィックの拡張と拡張DLAモデル
正方格子から構成される基盤を考え,それらの格子点をグラフィック画面の1ドットに対応させた.拡散律速でランダムウオークしている粒子が,引力項,基盤への付着確率など種々の条件下で基板に固定化される様子をグラフィック画面に描画した.
プログラムを単純にするため1つの格子点のグラフィックの情報を1バイトのメモリに対応させた.こうすることにより,16Mバイトのメモりがあれば,最大 4000x4000 の格子点の情報を格納でき,コンピュータのメモリの許す限り格子点を拡大して計算できる.グラフィックライブラリとして自作の EGC386 [4] を用いた.
基盤の上方で発生した1個の粒子は,ランダムウオークしながら基盤に近づく.その間,一定の距離内にクラスターが存在すると引力項が働きランダムウオークが制限を受けクラスターの方に力が働く.基盤の格子点にはそれぞれ異なる一定の付着確率を与えてあるが,ランダムウオークによって基盤に達した粒子がすべて基盤に固定されるわけではなく,その一部のみが固定されると考えた.さらに,クラスターの凝集に異方性を考慮した.
3.フラクタル次元
フラクタル次元の算出には Box Counting 法を用いた.この測定方法は,まず基盤表面を底面とする一辺が 1600 の立方体を一辺が r の細胞で分割する.細胞内に粒子が1つでも含むものを数えて,その総数を N(r) とする.r を様々に変化させて (2) 式が成立すれば,D はフラクタル次元になる.
N(r) ∞ r-D (1)
実際に測定した結果は,2つの次元からなっていることを示した.つまり,その微細構造はフラクタル図形であることを示した.そこで,フラクタルの支配する上限(εmax)を基盤表面上に存在する空洞の最大直径とし,粒子の直径を下限(εmin)とした.このときεmax と εmin は次式を満足しなければならない.
εmax/εmin ≧ d1/D. (2)
以上のことからクラスターサイズに及ぼす引力項の影響,さらに,フラクタル次元と被覆率の関係などについて考察した.
1) H. Miyata, S. Tokuda, and T. Yoshida, Appl. Spectrosc. 43, 522 (1989).
2) H. Miyata and T. Nakatani, J. Chem. Software, 1, 139 (1993).
3) H. Miyata, 広島県立大学研究紀要,8, 95 (1996).
4) H. Miyata, Chem. Software, 15, 339 (1993).