演題 ノート型パソコンによる化学実験支援
発表者
(所属)
○芦田 実,齋藤 豊,吉田 俊久 (埼玉大学 教育学部)
連絡先 〒338 埼玉県浦和市下大久保255 埼玉大学 教育学部 理科教育講座
TEL 048-858-3225 FAX 048-858-3227
キーワード Science experiments & education, Measuring interface & software Note-typed personal computer, N88BASIC, QBASIC, Visual BASIC
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
教育現場の観察・実験(特に化学・物理)の実施率を上げるために実験教 材を開発した.ノートパソコンのRS-232Cを通して理科実験を計測するために,安 価な計測装置を自作し,ソフトを開発した.さらに市販の装置・ソフトと 自作の装置・ソフトを組み合わせる方法も確立した.
環境 適応機種名 PC−98,DOS/V   
OS 名 MS−DOS,MS−DOS/V,WINDOWS3.1   
ソース言語 N88日本語BASIC,QBASIC,Visual BASIC(Win3.1)   
周辺機器 自作のセンサと計測装置,理科インターフェィスセット(日陶科学)   
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • ○未定
具体的方法

1.はじめに

 現在の教育学部生の小学校〜高校における観察・実験の経験が以前に較べて大幅に減少 している.この低下が教育学部学生の理科に対する好き・嫌い,そして教員になったとき の理科実験の指導に対する不安に影響していることが判った1−3).それゆえ,将来的に は小学校〜高校における観察・実験の実施率がますます減少する恐れがある.本研究では 特に化学・物理実験の実施率を上げるための実験教材を開発することを目的とし,ノート 型パソコンのRS-232Cを通して理科実験を計測する方法を研究した.安価で誰でも容易に 作れる計測装置を自作し,これを動かすソフトを開発した.さらに,市販の装置・ソフト と自作の装置・ソフトを組み合わせて使用する方法も確立した.

2.計測装置の自作とソフトウェアの開発

 ナショナルセミコンダクタ社製のAD変換器ADC0834を利用して4),4入力CH・8bitシリアル出力の 入力インターフェィスを製作した.製作した計測装置部のうち温度,圧力,pH,電流,電圧は麻 生が開発したもの5)を,体積計測部(10, 50 ml)は矢沢らが開発したもの6)を改良し た.照度計測装置部(0〜100 Lx)はシリコンフォトダイオードSP-45MLを利用して製作した.
 教育現場ではPC-98機が主流であり,制限が少なく簡単なプログラム言語としてN88日本 語BASIC(MS-DOS版)を最初に選んだ.変数を共通にした複数の短いプログラムをCHAIN命 令で連結する方法で計測ソフトを開発した.IBM系のDOS/V機ではN88BASICを使えないので, MS-DOS/Vに付属しているQBASIC(日本語不可)に計測ソフトを移植した.

3.市販の計測装置の利用とソフトウェアの開発

 教員は忙しいので市販装置も考慮し,理科教育用に市販されている理科インターフェイスセット( 入力インターフェイス±4 V/13bit,計測・データ処理用ソフト,気温センサ2個,液温センサ2 個,光センサ2個,音センサ,その他オプション)を試用した.センサの形状等の使用制 限,表示方法等にソフトの欠点がある.そこで自作のセンサを理科インターフェイスに接続する方 法を確立し,Windows版のVisual BASICで計測ソフト(自作インターフェィスには接続不可)を開 発した.

4.理科実験への利用

 自作の計測装置・ソフトで多くの実験を計測した.その中から2つの例を図1,2に示 す.蒸留の様子や気体の法則をわかりやすく詳細に観察できる.


図1 メタノールと水の混合物の蒸留 図2 気体の法則の実験

5.おわりに

 本研究ではノートパソコンを理科教育の実験支援具に用いる3つの方法を提示した.第 1の計測装置・ソフトを全て自作する方法は,安価で,多種の物理変化を測定できるが, 装置の校正・修理やソフトの開発に時間がかかる.第2の市販装置・ソフトを用いる方法 は,校正が簡単ですぐに使え,精度が高いが,オプション(未校正)が高価で,測定方式, センサの種類・形状,結果の表示・印刷等に制限・欠点が多い.第3は市販装置と自作の ソフトを基礎にし,オプションとして自作センサを組み合わせる方法であり,この方法が 最も適当である.市販ソフトは欠点が多すぎる.付属センサは校正時間や耐久性が優れて いる.しかし,オプションセンサは自作したほうが費用面でも時間的にも得策である.

6.参考文献

1) 貫井正納,他, 千葉大学教育学部研究紀要, 34, 18-22 (1985)
2) 齋藤豊,他,埼玉大学紀要教育学部(数学・自然科学), 45(1), 17-32 (1996)
3) 埼玉大学教育学部,埼玉大学教育学部学生意識調査報告書(その1), p.41, 82 (1994)
4) 加藤隆志,トランジスタ技術, (1), 470 (1991)
5) 麻生偉佐男,芦田実,吉田俊久,化学とソフトウェア, 14(3), 173 (1992)
6) 矢沢貴史,松村由美子,平成4年度埼玉大学教育学部化学研究室卒業論文 (1992)