演題 ビデオ動画を取り込んだ電子出版物の試作(2)物理化学実験
Development of the Multimedia Software in Chemistry Education (2) Physicochemical Experiment
発表者
(所属)
川崎 アリサ、吉村 忠与志  (福井高専)
Arisa KAWASAKI, Tadayosi YOSHIMURA (Department of Chemistry & Biology Engineering, Fukui National College of Technology)
連絡先 〒916鯖江市下司町 福井高専
Tel 0778-62-1111ex458, Fax 0778-62-3415
キーワード CAI, QuickTime, 化学ドライラボ教育, 物理化学実験, 電子出版物
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
化学ドライラボ教育において、CAI用のソフトウェアを体系的に開発していく中で、約一分程度のビデオ動画を貼り付けて、音声を加えたシステム(電子出版物−物理化学実験−)を開発した。
環境 適応機種名 Macintosh   
OS 名 System 7(漢字Talk 7.2)   
ソース言語 Expanded Book Toolkit II version 1.5   
周辺機器 AV機器一式 本学会の論文にて紹介する。   
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • 未定
具体的方法

1.はじめに

 最近のコンピュータにはCDドライブが標準装備であり、AV対応機種も普及している中で、CD-ROMタイトルが海外版を中心に大きなマーケットとなりつつある。このようなマルチメディア環境を化学教育においても利用したいところであるが、悲しいかな化学教育に関するCD-ROMタイトルはまだ開発されていない。その開発はこれから始まるのである。板書では取り扱えなかった動画入りの電子出版物が近未来に化学教育・研究の分野で開発・普及することは確実である。
 QuickTime は、最近実用化したものであるから、コンピュータで取り扱える動画の解像度はいまひとつの感があるが、高速 CPU の開発と共に近未来にはビデオ画像並みの高解像動画を QuickTime で取り扱えるようになると思われる。

2.動画入りの電子出版物の試作

 化学実験の事前学習のために化学ドライラボ教育用ソフトウェアを開発し活用してきたが、これまでの技術ではビデオ動画の取り扱いは不便であり、CAI ソフトウェアに動画を取り込むことを断念してきた。しかし、QuickTime の登場で、だれにでも簡単にビデオ動画を取り込めるようになったので、早速、動画入りの電子出版物を試作してみた。テーマはいろいろと考えられるが、従来から進めてきた物理化学実験の事前学習のためのCAI 教材を検討した。実験の操作方法をビデオで説明する方法が良く採られるが、一テーマで数時間を掛けないと学習が終了できず、知識の習得に時間と持久力が必要であるという欠点があり、見たい所だけを掻摘んで学習することが困難であった。そこで、ビデオ画像をセクションごとに約1〜2分に切り刻んで、物理化学実験操作の文書にビデオ動画を張り込んでみた。これによって、学習したい所に飛んで短時間に音声を伴うビデオ動画による事前学習が可能となった。
 この試作に使用したコンピュータ環境は、Macintosh Quadra 610 をAV対応(Video Spigot Board)に改造して、Adobe Premiere 2.0J とマックライトII ver 1.5である。さらに、電子出版物の作成のために、Voyager Expanded Book Toolkit II version 1.5を用いて教材システムを構築した。

3.電子出版物(物理化学実験)

 電子出版物の物理化学実験テーマとして、20項目の実験が用意されているので、下記の3つのテーマについてまずビデオ撮影を行った。実験機器の使用方法をビデオ撮影して、そのビデオ動画を使用方法のセクションごとに約1〜2分に切り刻んでビデオ動画ファイルを作成した。音声は、撮影と同時に録音したものを原則として利用したが、撮影条件によっては、雑音を伴うことが多い。逆に雑音なしの撮影は困難である。雑音の多いビデオについては、ビデオ動画ファイルの作成の際、改めて音声を入れ直すこととした。他の実験項目についても随時作成していく予定である。
 No.1  中和熱の測定
 No.15 濃淡電池の起電力測定
 No.18 電位差滴定
 これらの電子出版物は、Expanded Book Toolkit II version 1.5を用いて教材システムを構築しており、このToolkit II version 1.5を用いて構築したものはMacintoshという機種を問わず起動できるので、汎用性があり有用と思われる。

4.マルチメディア利用の効果

 従来のCAIソフトウェアでは、ビデオ動画の利用は試験的に試みられていたが、その方法はレーザーディスクやビデオデッキをコンピュータで制御して長時間のビデオを観賞するものであった。本研究では、ビデオ動画を観賞から、知識習得の域に細かく切り刻んでビデオ動画ファイルを作成することで、短時間での学習効果の向上が見られた。これは、新しい教育的効果である。