演 題 |
プラスチック廃棄物の判別
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発表者 (所属) |
田辺和俊、○松本高利(物質研)
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連絡先 |
〒305-8565 茨城県つくば市東1-1 物質工学工業技術研究所
TEL/FAX 0298-61-4432
E-mail: |
キーワード |
プラスチック廃棄物、赤外スペクトル測定、ケモメトリックス解析
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開発意図 適用分野 期待効果 特徴など |
近赤外及び中赤外スペクトル測定とケモメトリックス解析を組み合わせてプラスチック廃棄物を迅速に判別する手法を開発する
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環 境 |
適応機種名 |
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O S 名 |
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ソース言語 |
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周辺機器 |
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流通形態 |
- 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
- 独自に配布する
- ソフトハウス,出版社等から市販
- ソフトの頒布は行わない
- その他:未定
| 具体的方法
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1.目的
プラスチックは国内で年間1400万トン生産され、ほとんどが廃棄され、リサイクルはわずかである。しかし、プラスチックは軽くて嵩張り、廃棄物の中で大きな容積を占めるため、埋め立て場の逼迫など廃棄物処理問題の元凶となっている。又、焼却の際に発生するダイオキシンも大きな問題になっている。従って、廃棄物処理という地球環境の点からも、又、原料(原油)の枯渇という地球資源の点からもプラスチックのリサイクルが不可避である。プラスチックのリサイクルには、ポリマーに再製品化(マテリアルリサイクル)、原料モノマーに分解(ケミカルリサイクル)、気体・液体・固体燃料に加工(フュエルリサイクル)、熱・エネルギーとして回収(サーマルリサイクル)などいろいろな方法があるが、どのリサイクルにおいてもプラスチックの分別が不可欠である。
2.多種類のプラスチックの判別
プラスチックの分別にはこれまで比重の差を利用する方法、X線や近赤外線を利用する方法などが実用化されている。しかし、これまでの方法ではいずれも数種類程度のプラスチックの判別しか検討されていない。又、比重法やその他の既存の方法でも数種類程度のプラスチックの判別が限界である。ところが、国内では容器包装リサイクル法の本格的施行を眼前にして、多種類のプラスチックを判別する手法が求められている。しかし、プラスチックは数十種類以上あるが、このような多種類のプラスチックを判別する手法はこれまで国内外でも皆無であった。そこで近赤外分光測定とケモメトリックス解析を組み合わせることにより、多種類のプラスチックを迅速に判別する手法を検討した。
51種類のプラスチックの約300点の試料について波長1.3〜2.3μm領域の近赤外反射スペクトルを測定し、まず、51種類のプラスチックが判別可能かどうかを調べるために、各プラスチックについて平均スペクトルのデータを用いて主成分分析を行った。その結果、各プラスチックの点は空間内にかなりよく分散し、近赤外スペクトルのデータで51種類のプラスチックの判別が可能であると予想された。そこで、ニューラルネットワークで判別テストを行うために、各プラスチックのスペクトルデータをクラスター分析して2〜4個のクラスターに分類し、それぞれのクラスターの平均スペクトルを3層構造のニューラルネットワークに入力して学習を行った後、個々の試料のデータを入力して判別テストを行った。その結果、極めて少数の学習データを用いたにもかかわらず平均的中率として80%近い結果が得られ、多種類のプラスチックを迅速に判別する手法を開発することができた。
3.黒色プラスチックのグレードの判別
プラスチック廃棄物の内、容器包装類の大概のプラスチックは近赤外反射スペクトル測定により迅速な判別が可能であるが、家電製品や自動車用品に使用されている黒色樹脂は反射スペクトルが測定不可能である。また、これらの樹脂のリサイクルの際にはグレードの判別も必要であるが、グレードを迅速に判別できる技術は現状ではない。そこで家電製品や自動車用品のリサイクルのための黒色樹脂のグレードを迅速に判別する技術を開発することを目的として測定法および解析法を検討した。
家電製品に使用されている黒物の判別で要求されている課題は素材樹脂と添加剤(難燃材等)の判別であり、また自動車部品に使用されている黒物の判別で要求されている課題は素材樹脂、特にグレードの判別であるが、このようなきわめて高度な判別を迅速に行える計測法は中赤外分光法以外にはない。そこで、素材樹脂のグレードや添加剤を迅速に判別するための中赤外分光法の測定法を検討した。拡散反射(DR)法、光音響(PAS)法など種々の測定法を検討した結果、黒色樹脂の中赤外スペクトルを最も迅速に測定できる方法として全反射(ATR)法を採用した。この方法を用いれば前処理が不要であり、数秒の測定でSN比の高いスペクトルを測定することができ、リサイクルの目的に適している。さらにこの方法を用いて樹脂のグレードの判別を検討するために、グレードの異なる自動車用黒色PP樹脂9試料の中赤外全反射スペクトルを測定した。試料によるスペクトルの違いを調べた結果、3000cm-1領域に違いが最も顕著に現れることが分かった。そこでこの領域のスペクトルデータについて主成分分析を行った結果、各試料のスペクトルデータがよく分離され、グレードの判別が可能であることが分かった。
4.今後の課題
本年4月から本格的に施行された容器包装リサイクル法を完全に実施するためには、まだまだ多くの課題が山積している。例えば、種々雑多な形状・色・組成の容器・包装類を自動的に分別する装置の開発は現在では難問である。また家庭から排出される一般廃棄物では汚れの付着は不可避であるが、そのような汚れた容器・包装類を的確に分別する装置の開発も難問である。さらに異種類のプラスチックフィルムを積層した容器(例えばマヨネーズ入れ)や、異種類のプラスチックを組み合わせた容器(例えばPETボトル)などもリサイクルを困難にしている。今後、家電製品、自動車用品、繊維製品、建築用品など様々な分野のリサイクル法が予定されており、リサイクル社会の実現のために山積する課題を1つづつ解決する必要がある。
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