演 題 |
原研における並列化分子軌道計算の展開
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発表者 (所属) |
望月祐志(日本原子力研究所 計算科学技術推進センター)
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連絡先 |
〒153-0061 東京都目黒区中目黒2-2-54
E-mail: |
キーワード |
分子軌道法,並列処理,大規模計算
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開発意図 適用分野 期待効果 特徴など |
北欧のフリーソフトウェアを中心にした計算環境の整備と応用
DALTON:多彩な分子物性の評価,内殻励起状態の求解
DIRAC :4成分の相対論的計算
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環 境 |
適応機種名 |
IBM,SGI等(NEC系は発表者が整備)
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O S 名 |
UNIX系
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ソース言語 |
FORTRAN77/90,メモリー割当てにC
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周辺機器 |
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流通形態 |
- 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
- 独自に配布する
- ソフトハウス,出版社等から市販
- ソフトの頒布は行わない
- その他:未定
| 具体的方法
発表者にコメントして下さい.
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1.はじめに
日本原子力研究所・計算科学技術推進センター(文中以下、原研・計算センターと略記)では、並列処理の導入により科学技術分野における各種シュミレーションの高速化・大規模化を進めてきている[1]。非経験的分子軌道法は、計算化学分野の代表的な計算科学技法であり、スペクトルや化学反応の解析、物性値の評価、あるいは分子設計に威力を発揮している。分子軌道法において計算コストを決定付けているのは、添字4つを持つ電子間反発積分の生成、ならびに行列要素への寄与の加算であるが、添字をバッチ化してタスク分配する、いわゆる積分駆動型のレシピによる並列化で効率的に加速することが可能である。商用のGaussian[2]、あるいは定番のフリーソフトであるGAMESS-US[3]では、SCF(:HF,DFT)やMP2のエネルギー計算及びその解析微分計算が並列化されている。北欧系のDALTON[4]とDIRAC[5]も並列対応のフリーソフトで、各々、多彩な分子物性の評価、4成分の相対論的計算に特徴があり、基底関数の総数が千以上に達するような大規模問題が解ける。DALTONで特記すべきは、原研も運営に関与しているSPring8等の放射光施設で得られるX線領域の内殻電子スペクトルの解析が出来る点である。DIRACは、原子力工学上極めて重要でありながら電子論的理解が十分ではない、高放射性のアクチニド元素イオンの水和状態に関する基礎的知見を「安全に導出する」ことも可能とする。これらの問題は原研のミッションに符合したものであり、発表者はここ3年間で計算センター(並びに科学技術振興事業団のスーパーコンピュータセンター)にDALTONとDIRACの並列計算環境を整備し、応用研究を行ってきている。本ポスターでは、これらを事例紹介としてまとめて報告する。
2.DALTON
DALTON[3]は、1997年秋にR1.01がリリースされて直ぐに導入した。ただし、オリジナル版はNEC-SX系には対応していなかったために移植作業を行っている。DALTONの多彩な物性評価能力は、応答関数法に基づいており、非線形光学量、多光子吸収、核磁気結合定数、溶媒効果などを解析的に計算出来る。並列処理は、SCF状態を参照する3次までの応答関数と内殻孔状態に対して可能である。発表者の並列化応用計算としては、(a) シリコン結晶の分極率のクラスターモデル計算[6]、(b) 水和システイン分子の硫黄K殻励起スペクトルの解析[7]、(c) 遺伝子-塩基分子類の窒素K殻励起における化学修飾の影響評価[8]、などがあり、関数総数で数百のジョブは完全にルーチン化している。また、異機種間の通信を可能とする原研開発のライブラリStampi[9]も組み込んでおり、センター内のIBM-SPとNEC-SXを結んで計算することも可能である。
3.DIRAC
1998年秋にR3.1として初リリースされたDIRAC[4]は、開発者が一部共通するDALTONの兄弟ソフトに当たる。導入にあたっては、SXへの移植作業をやはり要した。DIRACの一番のアピールポイントは、4成分SCFすなわちDirac-Hartree-Fock計算を並列処理により高速に解くことが出来る点で、発表者は現在、高レベル廃棄物中に存在する超ウラン元素キュリウムの3価イオンの水和に関する系統的な計算を進めている[10]。4成分計算では、動力学釣合から大成分基底の微分として小成分基底が生成される。この計算では、30s25p19d13f2gの原始関数をキュリウムの大成分基底としているため、小成分関数は25s49p38d21f13g2hとなっている。八面体構造の6水和体では関数の総数は2,108だが、計算センターの最新のIBM-SPでは15並列により1つのジョブが6時間程で求解可能である。なお、DIRACには相対論的MP2やCCSD(T)、完全開殻内CI、制限空間CIの機能もある。
4.今後
DALTONもDIRACも共に、マイナー修正ではあるが時期版(各々、R1.1とR3.2)が(要旨執筆時点で近々に)リリースされる見込みであり、既存の計算機環境に導入するのはもちろん、来年度末に稼働が予定されている地球シュミレータ[11]上での運用も睨んだ作業も進めていきたい。地球シュミレータはNEC-SXの巨大なクラスターと言えるもので、8ベクトルCPUが1ノードを構成し、それが計640個結合されている。稼働後には、現在よりも桁違いの高速、大規模な分子軌道計算が可能になるであろう。
5.参考文献
- http://guide.tokai.jaeri.go.jp/ccse/index-j.html
- http://www.gaussian.com/
- http://www.msg.ameslab.gov/GAMESS/GAMESS.html
- http://www.kjemi.uio.no/software/dalton/dalton.html
- http://dirac.chem.sdu.dk/
- Submitted to THEOCHEM
- Chem.Phys.Lett. 309 (1999) p241
- To appear in J. Synchr. Radiat. (2001)
- http://guide.tokai.jaeri.go.jp/program/eng/software/list/
- 分子構造総合討論会2000, 3C8
- http://www.gaia.jaeri.go.jp/main.html
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