(Received: September 20, 2000; Accepted for publication: December 6, 2000; Published on Web: January 30, 2001)
リガンド阻害物質が受容体に結合する様式を同定できるかどうかは、化学構造を基にした薬物設計を成功させる鍵になる。コンピュータドッキングは、リガンドと受容体分子をいろいろな方法で、一定方向に位置付け(ドッキング)し、それに対して適当な評価 式を用いて得点を与えることである。AutoDock3.0はリガンドを活性部位にユーザーが誘導する必要はなく、システムが、自動的に最適な位置を定めるものである。HIV proteaseに元々組み込まれているリガンド(inh1)を元にして、各種の誘導体を合成しそのドッキング・モードを研究しKi値と比較した。その結果inh3trans と inh6Hが他の阻害物質より、より強力であることがわかった。一連のHIV protease阻害物質に対し分子間相互作用エネルギーからギブスの自由エネルギーを計算し、実験により求めた阻害強度から計算した値と比較したところ比較的良好な相関性が見られた。この事実に基づき、inh1とinh8のドッキングにおいて、プロリン環のt-butylの周辺の疎水性領域が空白となっていることに着目し、その領域を満たす化合物をコンピュータ上で作成した。それらの化合物のドッキングを行ったところ、benzyl基を持つものが最も低い、ドッキングエネルギーを呈した。この論文の目的のひとつは、計算機実験を行って、HIV protease阻害物質に対する薬物設計を行うことであったので、著者はこれらの化合物に対する臨床上の探索をその分野の専門家に委ねる。
キーワード: Computer docking, Drug design, HIV protease, Gibbs free energy, Ligand inhibitor