モンテカルロ・シミュレーション法を用いた全ヒトゲノムショットガン戦略における配列決定冗長度(Redundancy)評価

齋藤 あゆむ, 西垣 功一*

埼玉大学工学部機能材料工学科,
〒336-8570 浦和市下大久保255
*e-mail:

(Received: November 16, 1998; Accepted for publication: November 30, 1998; Published on Web: January 14, 1999)

 全ゲノムショットガン配列決定法の本質を定量的にとらえ、この分野での焦眉の論争に科学的解答を与えるために、モンテカルロ法によるシミュレーション(Figure 1)を行った。その結果、Figure 2に関連して示されるように、ヒトゲノムのような巨大ゲノムにおいても適度な配列決定冗長度(約7)で、かつ十分満足しうる、エラー率(10-4以下)、経費および速度で配列決定可能であることが推定された。このとき、ゲノム全体を一つながりのものとし、配列決定を完了させるためには、ランダム過程(ショットガン)のみに依存するのは合理的でないことが示された。すなわち、ランダム過程から決定的過程(例えば、PCRリレー)への切換が必須であることがFigure 3などを用い、議論された。その効率的切換点が決定配列分率(coverage)の関数および両過程の経費の関数として与えられた。ヒトゲノム配列決定における最適解として推定された冗長度(約7)は、中庸であり、決定配列精度にも積極的に寄与する意味があることが強調された。シミュレーション結果による冗長度は、現在までに行われてきた細菌などに関するゲノム配列決定実験結果(Table 1)と基本的に矛盾しなかった。また、ここで行った全ヒトゲノムショットガン戦略での経費見積りは、独立に算定したVenterらの見積りの約3倍であった。結論として、細菌の1000倍ものサイズをもつヒトゲノムについても、全ゲノムショットガン法は有効であると推定された。

キーワード: Monte-Carlo simulation, Whole genome shotgun sequencing, Human genome, Redundancy, PCR-relay, Random process


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